あっちでも警報

夕べ、なにぼうと一緒に布団に入り、なにぼうがうとうとと寝かかった頃、聞き慣れない警報の音がし始めた。アパートの警報とは音が違う。どこから聞こえてくるのかはっきりとわからなかったので、火災報知機とは違った種類の警報かと一瞬焦った。台所でオーブンを開けてはピー。フライパンを熱してはピー。すぐピー。こんなオオカミ警報はいくらなっても消防は来ない。音が違うのはきっと重要な警報で、消防や警察がトンで来るに違いない....。こっそりと玄関を開けて覗いてみるとどうやら向かいのHiltonで鳴っているようだ。寝室の窓からこっそりと見続ける。ミケも興味津々な顔つき。ただ一人不満げなのはなにぼうである。非常口から宿泊客がどんどん出てきてフロントに集まっている。「どんどん」といっても車はそれほど止まっていないし、実際はそこそこ。そのうち消防車が来た。はしご車も来たが、それはちょっと離れたところで待機しているようだ。しばらくして警報の音は止んだ。お客さんたちもそれぞれ引き上げて行く。誰かが間違って警報を押したのかもしれない。そういうわけで私の野次馬根性も満足し、また布団に潜り込む。なにぼうはすっかり目が冴えてしまったようで寝付けなかったようだが、私は本を読み始めると催眠術のようにすぐ眠くなったのだった。